ある研究報告によれば、がん・心筋梗塞・脳卒中などの命にかかわる病の多くは、遺伝的なものではなく生活習慣によるものなのだそうです。だとすれば、現代人の多くは、生活習慣の悪化により、さまざまな病気のリスクにさらされていることになります。

 

未病改善 薬剤師に求められる新たな役割は?

 

中国最古の医学書『黄帝内経』にも、「上工は未病を治す(名医はまだ症状があらわれていない病気まで治す)」と書かれているように、東洋医学の世界では、いにしえの時代から未病に対する考え方が大切にされてきました。

 

一方、ある特定の症状に対して緩和や治療をおこなう対処療法が中心の西洋医学は、東洋医学とは根本的に考え方を異にしており、東洋医学とは別のかたちで発展を遂げてきました。

 

そのため、東洋医学の世界で古代から脈々と受け継がれてきた優れた病気の予防法は、対処療法中心の現代の医療現場で実践される機会は少なく、一般にもよく知られていません。

 

病気は治す時代から予防する時代へと変わろうとしています。地域医療の担い手として名乗りを上げている多くの薬局では、すでに未病と向き合う取り組みをはじめており、その流れのなかで、薬剤師にもあらたな役割が求められています。

未病とは

病気になる一歩手前、まだ症状があらわれていない段階を、東洋医学では「未病」とよびます。未病という言葉の使われ方ですが、薬局業界では「未病に取り組む」「未病と向き合う」という使われ方がされたりします。

 

また、そこから転じて、病気にならないように予防する、というような意味合いで使用されることもあります。その場合は「未病を大切にする」というように使われています。つまり、この場合は「病気にならないように未病の段階で予防する」という意味になるわけですね。

 

まだ一般には、それほど認知されている言葉ではないので、薬局によっても若干使われ方が異なる場合もあるようです。個人的には、病気の根を取り除くという意味で使うのなら、「未病を改善する」という使い方が分かりやすいと思います。

なぜ今「未病」なのか?

医療費の増大は、国家にとっても個人にとっても大きな不安材料です。2014年には、わが国の医療費(医療保険・公費で負担される医療費)は、ついに40兆円を突破してしまいした。このまま医療費が増え続ければ、国家財政を大きく圧迫し、健康保険制度の存続も危機的状況に立たされることは避けられません。

 

一方、個人レベルでも、医療費は大きな負担となっています。厚生労働省2014年度概算医療費によれば、75歳未満の1人あたりの医療費の平均は21万1000円、75歳以上では、なんと4倍以上、93万1000円にもなります。

 

まだ、病院に行ける人たちは良い方で、お金がないので病院に行きたくても行けない、という人たちも少なくありません。特に年金暮らしの高齢者には、医療費は重くのしかかってきます。

 

医療費の削減は、国家レベル・個人レベルで、今すぐに取り組まなくてはならない大きな課題なのです。その一翼を担うことができるのが、未病改善の取り組みだと筆者は考えています。

薬剤師の役割は?

これまでの薬剤師の主な役割といえば、処方箋にしたがって薬を調剤、患者さんに飲み方を説明・処方すること。OTCならば、患者さんに相談された症状に対して適切な市販薬を教えてあげることでした。どちらかといえば、受け身の仕事といえます。

 

しかし、未病改善のためには、これだけでは不十分です。一般の人が未病を改善するためには、まず健康の尊さに気づき、ただしい生活習慣を身につけ、それを日々実践していかなければならないからです。そのアドバイザーとなることができる存在が薬剤師であると、わたしは考えます。

 

薬局は、病院よりも身近な存在であるというメリットを生かし、健康に対する啓もう活動から、実際の食生活やライフスタイルの提案まで、幅広い活動ができます。個人的には、最終的に、健康に関して、何らかの提案が出来るという付加価値が、薬局や薬剤師の存在意義になるのではないかと考えています。

薬局はどう変わる?

未病改善に向けた薬局・薬剤師の取り組みは、地域の人たちに積極的に働きかける自発的な活動であるべきです。これまでの薬剤師の仕事が、仮に受け身の仕事であるとすれば、未病改善に向けた取り組みは、それとはまったく逆の取り組みです。

 

無料の健康相談会や健康に関するイベントなどを開催している薬局もありますが、まだまだ「未病」という分野に関しては、どこも手探りのように見えます。ただ、未病に関しては、大手の薬局も本腰を入れて取り組み始めており、事業の中核に位置づけている会社もあるほどです。

 

なので、これから、地域の人たちの病気を未然に予防することが、地域医療を担う薬局の仕事となることは間違いありません。この分野で薬局が差別化を図るのであれば、たとえば、スポーツジムのように、トレーナー(薬局・薬剤師)がクライアント(患者さん)と個人契約をして、個別に健康をサポートする、といった大胆なビジネススタイルがあってもいいと思います。

 

既存の市場が飽和状態でパイの奪い合いになっている以上、どんなかたちであれ、薬局にとって差別化は不可欠です。IT技術が進み、端末も進化しているので、そういったものを積極的に導入すれば、さまざまなかたちで患者さんの健康をサポートすることは可能ではないでしょうか。

 

また、高齢者だけではなく、若い世代の健康教育の普及も急務と思います。「食育」という言葉がありますが、それらを含めた「健育(健康教育)」の普及が必要です。特に、小学校低学年から高校3年生ぐらいに向けた健康教育の普及が重要だと思います。それらに成功すれば、将来の医療費は大幅に削減できるはずです。

 

英語教育の充実が求められていますが、健康に関する教育は、それと同じぐらい、いやそれ以上に大切なはずです。古代ローマの詩人ユウェナリスも「健全な精神は健全な肉体に宿る」といっています。そんな効果も、これからの健康教育には期待したいところです。

 

課題は山積していても、みんなが知恵を絞れば、物事は一気に好転することがあります。未病の問題は、薬剤師さん・薬局関係者の方々をはじめ、医療に従事する多くの方に知恵を絞っていただきたい問題です。

 

 

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